ミライコイングリッシュでは、0歳~6歳までの小さなお子さんをもつママさん50人にアンケート調査をおこなった結果についてお伝えしています。
独自に、かなり細かなテーマまで調査していますので、今回のテーマも含めてさまざまなアンケート報告記事をチェックしてみてくださいね。
さて、今回のテーマは「今後、学校の英語教育は大きく変わると思いますか?」の第2弾となります。
英語教育は大きく変わらないと考える人も
英語教育改革についてポジティブな捉え方をしている人は約半数でした。逆に「英語教育は大きく変わらない」と考える人も半分という結果となっています。
これについては、さまざまな反応があるかと思います。その1では、学校での英語教育が変わると考えるママさんたちの理由について詳しく解説していますので、ぜひそちらもお読みになってください。
今回は「英語教育は大きく変わらないと思う理由」について、ママさんが答えた内容をもとに解説していきます。
生の英語に触れる機会がなければ難しい…
まず「いくら英語の学習をがんばっても、周囲に外国人がいなかったら難しそう」といった回答がありました。たしかに、言語といっても実際に使っている人とコミュニケーションができなければ、習得にも時間がかかると考えられます。
2020年から小学校の高学年でも英語が教科となり、以前までおこなわれていた「外国語活動」が小学校中学年に前倒しされました。さらに、中学校や高校では、教師が英語で授業を進めることを求められるようになり、アクティブな会話トレーニングも取り入れられています。
しかし、限定的な授業時数のなかで「生きた英語」に近づけるスタイルが導入されていても、実際の場面ではどうでしょうか。子どもたちが英語を使う機会があるかといえば、日本国内では不十分であるのが現状です。
学校の授業や受験以外に必要性がなければ、英語を使う動機付けも期待できず、英語力の向上にはつながりにくいと考えられます。
前提に「受験英語」がある限り変わらないのでは…
受験対策としての英語といった位置づけがされている限り、学校で英語教育が改革されても大きく変わらない…といった意見もありました。
日本では、英語の成績によって行きたい高校や大学、企業などが選定される場合があります。大学受験では以前までの文法や長文読解、英作文などの「読む」「書く」といった領域中心から「聞く」「話す」といった領域も重視される傾向にありますが、結局は「受験で勝つための英語対策」といった印象は拭いきれません。
小学校における外国語活動や英語科の授業については「聞く」「話す」を重視する向きは変わりません。ただ、「読む」「書く」領域も段階的に導入され、4領域のバランスが求められるようになったことに対し、親御さんのなかには「結局は大学受験対策の前倒しのようなもの」といった考えの人がいるかもしれませんね。
実際は「小学校と中学校のギャップを埋めること」や「総合的な視野で英語学習を進めたほうが効果がある」といった考え方に基づいています。しかし、英語の習得には時間がかかることもあり、結局、成果のわかりやすい「点数」に目が向くようになってしまうのです。
「受験英語」のため…になるのも、ある意味、自然な流れに沿っているといると思われます。
本来、この風潮を脱却し、子どもたちに「生きた英語」を身につけることを目的とする英語改革がおこなわれたのですが「受験がある限り、本当の英語力を習得するのは難しい」と冷めた見方をする人がいて当然かもしれません。
これまでの改革と変わらないのでは?
また、「これまでもさまざまな改革がされてきたけど、変わっている実感がない」といった意見もありました。とくに「ゆとり教育」について批判的な考えをもっている人もいるでしょう。
「ゆとり教育」とは、1990年代後半から2000年代初めにかけて実施された教育政策を指します。
このような経緯を知っている、あるいは実際の当事者でもあるママたちのなかには、「結局、今回もあまり期待できないんじゃないの?」」と懐疑的な意見をもつ人もいるようです。
英語を始める時期が遅いのでは?
また「英語の教育改革」とはいっても、「英語を始める時期がこれでは遅すぎる」といった焦りをおぼえるママさんもいます。年齢が上がるにつれ、次第に「カッコ悪いことはしたくない」「人前で英語を話すのは照れくさい」といった思いが芽生える傾向があります。このため、低学年あるいは幼児期から英語を教えたほうが良いと考える親御さんもいます。
ミライコイングリッシュの記事を読んでくださったり、実際におうち英語をおこなっていたりする方々は、早期に英語教育を始めるメリットを実感していることでしょう。
小さいころから英語に触れていれば、日本語と同じように親しみをもって使うようになり、「間違えたらどうしよう」「友達の前で話すなんて…」といった気持ちを抱く必要がないかもしれません。
実際に赤ちゃんから小学校に入学するまでの間に、第2外国語に慣れ親しませたほうが、効率的に英語力を向上させられるといわれています。これらの情報を得ている人々、あるいは根拠をもって子どもに英語を習わせているママさんたちは、英語教育を始める時期についても確固たる信念をもっていると考えられます。
急速に変わることはないだろう…
親御さんのなかには、「いきなり変わることはなくても、少しずつなら変わっていくのでは…」と思う人もいます。
改革をおこなったとしても、個人ごとの成長にも差があります。全国一律に始めた教育であったとしても、改革前から積極的に英語教育を取り入れていた学校と、今回の改革で本格的にスタートした学校とでは成果の度合いも異なるでしょう。
成果は、10年、あるいは20年後にわかることで、今すぐに結果を分析するのは難しいのです。結局は、今やるべきことをやっていくしかない…といった考え方は、間違っていないでしょう。
改革の準備が整っていないから
このほかに「改革に対する準備が万全でない」ことを指摘する回答もありました。最先端の教育をおこなっていくといった方針は理解できたとしても、実際に遂行するための準備ができているのかを疑問視しているのです。
たとえば「指導者の準備」が挙げられます。令和4年度英語教育実施状況調査(文部科学省)によるとCEFR B2(英検準1級)相当以上を取得している英語担当教師は、中学校で全体の41.6%、高校で72.3%となっています。
目標数値は中学で50%以上、高校で75%以上で、まだ目標に達していないことがわかっています。
さらに、授業発話の半分以上を英語で教えている教師については、中学校で74.4%、高校で46.1%、英語科や国際コミュニケーション科などの学科では、80%以上となっています。高校の数値が比較的低い理由として、高校の場合、英語の内容も高度になるため、英語で説明すると生徒の理解に支障をきたすといった背景が挙げられるでしょう。
教育改革とはいえ「所詮、文部科学省からいわれたことだし…」といった見方もあるかもしれませんね。
ただ、学校も必死に改革しようとしています。現に、教員採用についても改革を意識して自治体ごとにさまざまな変革をおこなっています。具体的な成果については、まだ先になるかと思いますが、子どもたちの英語力も少しずつ変化のきざしを見せ始めるのではないでしょうか。
私たち自身の意識を変えていく必要がある
さて、最後に紹介するのは「日本人のメンタリティーや社会構造を変えていかなければ、いくら教育改革をおこなっても成果はあまりない」といった回答です。
こちらは厳しい意見ですが、「なるほど」と思える内容です。まずは、問題や課題をそれぞれの立場で整理する必要があるでしょう。そこで、何が問題なのか、何をどう変えていくのがより良いのか、個人でしっかり整える必要があると思います。
学校の今
まず、学校です。すでに学校はさまざまな問題や課題を背負いすぎているように感じます。
英語教育だけでなく、国語や算数、数学などの主要教科はもちろん、技能教科や道徳、プログラミング、読書推奨、総合的な学習の時間、地域や家庭との連会、ICT教育、特別支援教育など、本当にさまざまな要素を日々の教育活動に取り入れています。
学校の先生方の多くは、このなかでも必死に子どもたちのためにがんばり、中途半端になりそうなところをギリギリで食い止めている状況なのではないでしょうか。
家庭の今
次に、家庭です。こちらも家庭ごとに事情が異なり、一概にはいえませんが、経済的なゆとり、精神的なゆとりをなくしてしまった家庭が増えているのでは…と思うことはあるでしょう。
以前は専業主婦として家にいることが多かったママが、今は家計を支えるために働く家庭も増えています。家事や育児、そして労働が加わった状況で、日々追われ、自分の時間をもてないママさんも多くなっています。そのなかで積もるのはストレスばかり…。この状況下で、本当に楽しく子どもと触れ合う時間や心のゆとりをもつのも難しいでしょう。
地域とのつながりも薄れてしまうなか、育児や自分自身に関する悩みを打ち上けたり、助けてもらったりする機会も少なくなりました。ママ友と話すにしても、何となく気が引けて、SNSで常に連絡を取り合うことすら面倒に感じてしまう人もいるかもしれません。
社会全体は今
今は、社会情勢も決して良いとはいえない状況です。パンデミックや戦争など国際情勢の変化、気候変動、物価やガソリン高など、本当にさまざまな問題が次から次へと湧いてくるほど…。悲観的になってしまうのも無理はありません。
大人が思うように働けない、稼げない…暮らしも大変…などといった状態では、子どもたちにも不安や不満が移ってしまうでしょう。将来に展望を抱けなくなるかもしれません。
だったら、これからどうする?
学校や家庭、社会はすべてつながっています。ここでは、つながっているからこそ、自分自身の気持ちのもちかたや意識が大切だということを解説します。
将来に悲観的になりそうだ…と思ったとしても、やはりここで重要なのは「自分自身」。これは「自分さえよければ」といった自分勝手な見方ではありません。
自分にとって大切なもの、ブレないものを1つでも2つでも見つけることです。お子さんのために親として何ができるのか考えること、そして、子ども自身が自分で考え行動する力を身につけることこそ、実はのちに必ず芽吹いて、生き抜く種となるでしょう。
そして、自分は人や環境の中で生かされていることに目を向け、相手を尊重し互いにWin&Winの関係を保つ姿勢を重視します。「おかげさま」「おもてなし」「おもいやり」といった言葉はすべて、相互関係を大切にする精神が含まれています。
実際は、どうなのでしょう。もう少しだけお付き合いしてください。
自分が変わることで「変えられる」とは
「今後、学校の英語教育は大きく変わると思いますか?」の質問に対して「いいえ」と答え、回答してくださった方々のなかには、次のような思いをもっている人がいるのではないでしょうか。
「国や学校ばかりに期待するのはなく、親として家庭で英語教育をしていく」
人に任せ過ぎたり、やってくれるだろうと期待したりして、自分が何もやらないのは良くない…。こうした思いには、自立心が大きく関係していますね。
たしかに悩みを持つ場合、誰かに相談したりアイデアを聞いたりして頼るのは必要なことです。しかし、実際にやるのは自分自身であり、結果に責任をもつのも自分です。
「英語教育を学校に任せておけば安心である」あるいは「英語はとくに重視しない」と考えれば、そうしますし、「英語は大事、学校の授業だけでは足りない」と思えば自分で何とかしようと考えます。
学校の英語教育改革に対して期待をしたりしなかったり…いろいろかと思います。ただし、教育の成果が目に見える段階になるまでには時間がかかります。
それは子育ても同じでしょう。しかし、だからこそ、「変わっていく」と信じることが大切でしょう。さらに、人任せな「変わっていくだろう」といったものではなく、「私も子どもも変われる」と信じる気持ちが、ポジティブなスパイラルをもたらします。
変わると信じて「今、自分は何をすべきか」考え、行動することは、親も子どもも大切にしていきたい価値観ではないでしょうか。
まとめ
今回は前回のその1の後編として「今度、学校の英語教育は大きく変わると思いますか?」の質問に対する回答内容をお伝えしました。
とくに「変わらない」と考える人々の理由について紹介しました。「生きた英語力が身につくとは思えない」「学校の先生の英語力がレベルに到達していないかも…」「実際は受験英語があるから難しい」「これまでもいろいろな改革が失敗してきたし…」といった思いは、一理ありますよね。
しかし、そう思うのとは別に、「じゃ、人任せにしないで、何とかポジティブな方向にもっていこう」と考え、自身で新たな挑戦をする行動力が大切です。
状況に不満をもってしまう場合は、人や環境のせいにしてしまいがちですが、一旦自分の見方を変えたり自立心を呼び起こしたりしましょう。他人は変えられないけど、自分は変えられると信じるのです。
「親御さん自身が子に対する見方や接し方を変えたら、何だか子どもが変わった気がする」といった経験をされた方もいるかもしれません。筆者も子育てでそのような経験をしました。完璧とはいきませんが、必ず変わります。変わると信じて日々を過ごすことが、少しずつポジティブさを取り戻すコツです。
本記事が、少しでもママさん、パパさんたちの参考にしていただければ幸いです。