日本の学校で習う英語は、どこかちぐはぐしているなあ、と感じたことはありませんか?実生活では使わないだろうと思う英文を覚えたり書いたりした経験が、多かれ少なかれあると思います。
最近の教科書はThis is a pen. のようなフレーズを扱っていないでしょう。しかし、筆者のような50代は、中学時代に一番初めに習う基本文型として教わりました。定期テストの問題に普通に出されていたのです。
しかし、普段の生活で鉛筆1本を指しながら、This is a pen.といった表現を使うことはありませんよね。
実際に使うことのない表現を、何度も聞かされたり教わったりすれば、覚える時間が無駄と思ってしまうでしょう。ただ、今もちょっとした場面で、「この表現って本当につかうのかな?」と思うケースはあるかもしれません。
想定していたのと違う挨拶をされる
イラストの女の子は、ネイティブのかたと集まってお茶することになったようですね。ママさんもお子さんも張り切って準備をしてきたようです。
楽しいお茶会にするために、やはり英語のあいさつで失敗したくないことでしょう。この親子にとって英語のあいさつといえば「How are you?」といった表現で、その模範解答である「I’m fine, thank you!」を復唱しているようですが、果たしてうまくいくでしょうか。
外国人にあいさつする際、最初に話しかける言葉といえば、あなたはどのようなフレーズを思い浮かべますか?やはり、こちらの親子のようにHow are you?と聞くこと!と思っている人が多いかもしれません。
さて、実際のお茶会ではどうだったのでしょうか。
「Hi! What’s up?」
想定外の言葉を受けて、ママさんはすっかりかたまってしまったようです。
こちらのママさんは、たまたまワッツアップといった表現を知らなかったようですが、最近では、多くの人々が「最近どう?」的な意味のフレーズとして受け入れているかもしれませんね。
未知の日常的なフレーズがたくさんある
ただし、ワッツアップは、あくまでも一例であり、それ以外にもたくさんの聞きなれない表現や慣用句などが、英語の世界にはたくさん存在しています。
自分では「〇〇の言葉や表現が正しい」と思っていたのに、実は英語の世界ではまったく異なる表現が使われるといったケースはよくあることなのです。
また、ワッツアップの意味がわかったとしても、実際に何と答えれば良いのか…悩んでしまうケースもあることでしょう。
「Hi, what’s up?」に対しては「I’m good.」でOK。
こちらのやりとりは、実際にかなりよく使われるものですが、かなりカジュアルな表現であるため、教科書にはあまり登場しないようです。
ほかにも「実際は日常生活でよく使われているのに、英語の教科書や学校の学習ではスルーされてしまう表現」はかなりあります。スルーされがちな表現を一つ一つ覚えていくためには、やはり生の英語に触れたり映画やアニメで学習したりするのが良いと考えられます。
「今のは、どういう意味なのかな」と、少しでも心にひっかかってしまう言葉や表現を一つ一つ自分で調べていくうちに、「生きた英語」が身についていくことでしょう。
日本語に置き換えて考えてみよう
実はこうした事情は、外国の人々が日本語を習って使う際にもいえることなのです。
日本人どうしであれば、たとえば人に会ったときに「こんにちは」といいますね。一般的な表現ですが、親しい間柄で「こんにちは」から始めるのが、なんとなく気恥ずかしくなる場面はありませんか。
そのときは「あれ?元気だった?!」といった感じで、軽く会話を切り出すケースが多いでしょう。あるいは、元の会社の上司で街で久しぶりに会ったときは、「大変ご無沙汰しております」といった表現を用いるかもしれません。
いずれにしても、相手との関係性やシチュエーションによって、あいさつの言葉にもバリエーションがあり、一概に「こんにちは」で済ませるケースは少ないといえるでしょう。
「こんにちは」と異なり、朝のあいさつである「おはよう(ございます)」は、意外とどの場面、相手でも使われるフレーズです。確かに、子どもが先生に向かって「おはよう」とはなりませんが…。いきなり「元気ですか?」という前に、まずは「おはよう(ございます)」は必須といえそうです。
こうした状況と同じように、英語もまた、相手や場面に応じて適切な言葉を使ってわかるものと考えられます。このため、「生きた英語」を身につけたいと思う場合は、実際は「Hello!」や「How are you?」といった決まり文句だけでなく、さまざまな表現やフレーズが使われることを念頭におく必要があるでしょう。
英語も日本語も「生きている」
また、日本語自体もずっと同じような言葉が使われるとは限りません。「それって本当?」といった表現が、親しい間柄では「マジ?!」と変わってきている点も例の一つとして挙げられます。
最近では「それは違っていない?」といった言葉も「違くない?」というように、年配の人にとって若干、首をかしげたくなるような表現方法も登場しています。
若いころに使っていた言葉が、今はほとんど聞かれなくなったり、逆に新たな表現が誕生したり…と日々変わっているのです。言葉もまた人間と同じように変化している「いきもの」といえるでしょう。
日常的なネイティブフレーズをご紹介
さて、「言葉は日々変化する」「多様な表現方法を知る」ことの大切さを認識したうえで、ここではネイティブの人々がよく使う「How are you?」に変わるフレーズを紹介していきましょう。
- How are you?:フォーマルな表現
- How are you doing?:カジュアル
- How’s it going?:よりカジュアル
- What’s going on?:かなりカジュアル
- What’s up?:かなりカジュアル
このほかに、久しぶりに会う人に対して「元気でしたか?」「最近どうですか?」のような質問をする場合は、次のような表現が使われます。
- How have you been recently(lately)?
- What have you been up to?
How have you been recently?と聞かれた場合は、下記のような答え方ができるでしょう。
- I’ve been good, thanks.(元気です、ありがとう)
- I’ve been doing well.(調子が良いです)
- I’ve been great!(素晴らしいです!)
- Not too bad.(それほど悪くない)
- I’ve been busy.(忙しいです)
What have you been up to?の場合は、以下のようになります。
- Not much.(とくに何もしてない)
- I’ve been traveling a bit.(少し旅行していました)
- I started a new job recently.(最近新しい仕事を始めました)
- I’ve been taking some classes.(いくつかのクラスを受講しています)
- Just the usual, nothing too exciting.(いつものこと、特に面白いことはない)
基本的なフレーズややり取りを子どもたちが習得したところで、あるいは学習を進める過程で、適宜「生きた英語」を学ぶ機会を設定するのは英語力を身につけるうえで有効です。
テキスト以外の教材も使ってみよう
生の英語に触れることが重要であるのはわかりましたが、日常的に英語を使う環境でない日本人が、さまざまな英語フレーズに触れるのは難しいでしょう。
しかし「教科書やテキストにある表現方法を参考にするしかない…」と考えるのは尚早です。実は生きた英語を習得する場合の方法として、世の中には多様な教材がたくさんあります。たとえば次の方法を取り入れてみましょう。
- 映画やドラマ、アニメ
- 英語の歌や洋楽
- 動画コンテンツ
- Webサイト
今は、インターネットやサブスクリプションなどを活用すれば、さまざまな情報が手に入ります。現地の生活がわかる内容の番組をセレクトして、聞き込んでいくと「あ、これって使えそう」と思える場面に出会えるでしょう。
子どもたちの好きな番組やドラマ、アニメを一つ選んで徹底的に視聴していくとよいかもしれません。お子さん自身が興味をもてるほうが、耳にも残りやすく、実際に聞き取れたときは自信につながるでしょう。
また、子ども向けの英語の歌はもちろん、親御さんが洋楽に親しみ、フレーズを覚えていくようにすると、お子さんにさりげなく英語を教えられる機会を得られそうです。
以下は、洋楽の歌詞からピックアップした表現です。参考にしてみてください。
- “When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me, speaking words of wisdom, let it be.”(困難な時には、聖母マリアが私に言葉をかけて、そのままにしておいて、と語る)~The Beatlesの『Let It Be』より~
- Never mind, I’ll find someone like you.”(気にしないで、あなたのような人を見つけるから)~Adeleの『Someone Like You』より~
- I see friends shaking hands, saying, ‘How do you do?’ They’re really saying, ‘I love you.'”(友達が手を振り合って「やあ」と言っている。実際は「愛してる」と言っているんだ)~Louis Armstrongの『What a Wonderful World』~
歌詞には、生活の場面で使えそうな言葉が散りばめられています。それらを選んで英語ノートに書き貯めておくのもいいでしょう。
動画と同じように、何度も何度も聴き直すうちに耳のほうも鍛えられてリスニング力も向上していきます。ぜひ親子で、英語の言葉集めを楽しみながらおこなってみてくださいね。
まとめ
英語学習を進めていく際に、教科書やテキストに頼り切ってしまうと、実際の場面で意外と応用できず言葉に詰まってしまう可能性があります。
教科書やテキストは基本的な学習内容を身につける場合に必要ですが、生きた英語力を身につけるには、ほかの教材も取り入れてみることをおすすめします。また、ネイティブの先生やママ友、お友達が身近にいる場合は、「ねえ、この表現って実際にどうなのかしら」「使う場面があるとすればどんなとき?」など質問したり、くわしく教えてもらったりするのも良いでしょう。
逆に、日本語について質問されて答えるケースがあるかもしれませんね。このようにコミュニケーションを通じて、互いの言語に対する理解が深まるのは、語学力とともに異文化理解にもつながります。
ぜひ、お子さんへの英語教育を通じて、ママさんやパパさん自身も言葉の奥深さや楽しさを味わっていきましょう。