筆記体という言葉を今の小学生や中学生が知っているのか…といえば、それはないかもしれません。読者のママさんやパパさんのなかには、中学生のころに授業で「筆記体」を教わった経験をもつ方々がいるかと思いますが、いかがでしょうか。
「筆記体」が時代遅れって本当?
英語における筆記体とは、手書きで文字を書く際の一つのスタイルで、文字同士がつながって流れるように書かれる書き方を指します。
文字がつながっていることで、より迅速に書けるため、手書きの効率を向上させる役割があるといえるでしょう。一般的な英語の筆記体には、文字のつなぎ目やループが特徴的で、装飾的な要素が含まれる場合があります。
英語の授業で教わった経験のあるママさん、パパさんのなかには、アルファベットの文字とは別に「筆記体」を覚えるわずらわしさを感じたかもしれませんね。一つ一つの文字がきれいにつながるように書くのは思ったよりも難しく練習が必要だったことを思えば、お子さんにはさせたくないと思うママさんやパパさんがいても自然でしょう。
逆に筆記体の美しさや書きやすさが気に入って、今でも筆記体で書く習慣のある親御さんもいることでしょう。日本人が習字を習うように、美しいカリグラフィーの習い事をしている人も、もしかしたらいるかもしれませんね。
ただ、英語の筆記体は最近の授業では取り扱われていません。今の10代、20代は筆記体で英文を書くのは難しいといえるでしょう。
また、アメリカのニューヨークタイムズの記事によれば、2013年調査で37%の人々が筆記体を書き、半数以上はハイブリット式(ブロック体に筆記体を取り入れるような書き方)で書いていることがわかりました。
昨今は、デジタルテクノロジーの時代。パソコンでのタイピング、スマホでのタッピングを通じてメールや連絡をする方法が取られています。「意外に書く時間が限られているなあ」と思うことでしょう。
そのなかで、筆記体を覚えることの必要性も薄れていると考えられます。
日本だけでなくアメリカでも、筆記体の必要性や教育現場における取り組みについてはさまざまな意見があるようです。
アメリカの一部の州では、一度取りやめになった筆記体の学習を小学校に取り戻しているところもあります。たとえば、テキサスやテネシー、ルイジアナ、カリフォルニア、フロリダなどです。
アメリカでは歴史的な文書は筆記体で書かれており、やはり(筆記体を)読めるようにしといたほうが学習効果が高いといった意見があるかもしれません。
ただ、実際は通常のブロック体で情報を取り入れるのはいつでも可能であるため、「筆記体を覚える必要はない」といった意見が主流であるといえるでしょう。
メールやSNSなどでのやり取りが頻繁におこなわれる現代では、手書きの機会を探すほうが難しいかもしれませんね。
「手書き」に対する人々の感情~アメリカの調査より~
筆記体の必要性がないとされる理由の一つに「モノを書く機会が少なくなり、筆記体を習っても使うことがない」といったものがあるでしょう。
つまり、筆記体を習う習わないを議論する以前に、「手書き」の機会が減少していることが「筆記体廃止」の背景にあるのです。
ここで、2018年4月のニューヨークポストに興味深い記事がありましたので紹介します。
ある新しい調査によるとデジタル技術に慣れ親しんだ世代ともいえるミレニアル世代(1981年以降に生まれ2000年代で成人または社会人の世代)は、55歳以降の世代よりも手書きの芸術を高く評価していることがわかりました。
また、ミレニアル世代は自身の手書きに自信をもっている傾向があり、約3人に1人が「自分の字は上手だ」と思っているそうです。逆に50歳以降の世代では17%と低い数値でした。
さらに回答者の81%が「手書きのメモのほうが気分が良い」と考えていることがわかっています。
しかし、実際はどうでしょうか。アメリカ人の3人に1人は手書きのメモを受け取ってから1年以上経っているとし、15%は実際に受け取ってから5年以上経過していると回答しています。また、75%は何も書いておらず、15%は手書きメモを15%以上書いていないとか…。
そして、調査では「デジタル社会の利便性を認識していても、その60%は手書きにメモを受け取りたいと考えている」こともわかりました。
さらに調査では手書きを好まない人の理由について聞いています。その回答結果はたとえば以下のとおりです。
- キーボードか電話のほうが便利(63%)
- 手書きには2倍の時間がかかる(32%)
- 手書きだと実際に手が痛い(16%)
なかには、手書きをする場合「質が重要」であると認識し、だからこそ手書きを採用しにくくなってしまうケースもあるようです。
人々は手書きのほうが心理的に良いという点についてわかってはいても、手書きに至るまでの背景や「できない理由」が影響して、生活の場面での活用が減ってきていると考えられます。ただ、テクノロジーが発達する現代こそ、ミレニアル世代のように手書きの価値を見直し、自分らしい表現を用いることも必要だと考えますが、いかがでしょうか。
筆記体が読める、書けることのメリット
筆記体を読んだり書いたりする必要はないと考える傾向にあるなか、筆記体を使うメリットは本当にないのでしょうか。
先ほどの調査結果からわかるように、実際は手書きの要素を残している、あるいは残したいと思っている人々が意外に多いことも事実です。
この章では、筆記体を読んだり書いたりする利点についてまとめてみたいと思います。筆記体の良さとしては以下の6点が挙げられます。
- 書く場合:洗練された印象を残せる
- 書く場合:署名がかっこよくなる
- 読む場合:筆記体の文書を読む際に役立つ
ごく当たり前の利点かもしれませんね。ただ、同じ手書きでも、招待状やグリーティングカード、ポスター、フライヤーなどで筆記体を使うと、おしゃれで見栄えの良い印象を与えられます。
また、書類にサインする際、筆記体でなくても構わないのですが、実際の署名は筆記体であることが多いでしょう。国内外でサインが必要な場面で役立ちます。
さらに、ブロック体よりも筆記体のサインのほうが偽造が難しいため、安全性の面においても筆記体で書いたほうが良いといった見方もあります。
流線型の綺麗な筆記体で手紙やサインを書けることは、自分の文字だけでなく人柄までも魅力的に映ることがあります。 筆記体をまったく書けない、読めない…よりは、少しでも習っておいたほうが不便さを感じるケースを少なくできると考えられます。
親御さんが英語を教えるときに、無理やり「筆記体も覚えなさい!」と言えば、お子さんが抵抗感を抱く場合もあります。導入の仕方やタイミングはよく考慮すべきでしょう。興味をもつ場合にさりげなく教えてみてもいいかもしれませんね。
そもそも筆記体を覚えるのってそんなに大変?
ところで、筆記体を覚えるのは大変なのでしょうか。あまりにも大変な場合は、やはりお子さんの英語学習に取り入れる際に悩んでしまいますよね。
イラストにあるように、筆記体といってもアルファベット26文字分を覚えればよいので、とくに難しいというわけでもなさそうです。筆記体のなかでもまずは、自分の名前をピックアップして、すらすら書く練習をするとよいかもしれませんね。
お子さんが自分の名前をブロック体で書けるようになったら、筆記体にも挑戦させるママさんがいても自然でしょう。お子さんが自分の名前を、ひらがな、漢字、英語のブロック体と筆記体…のように、さまざまな書き方で書ければ、自信になりますね。
「筆記体をかけなくてもとくに困らないけれど、書けたほうがいいかも」といった気楽な気持ちでいたほうがいいでしょう。完璧にマスターすることを目指すと、お子さんにとってプレッシャーになる可能性があります。
「もしかしたらいつか役立つかも」といったスタンスで、お子さんの興味に応じてお子さんの文字学習(筆記体)を取り入れましょう。
レタリングの一環として教えてみよう
ところで、小さいころにレタリングに夢中になった経験があるママさん、パパさんがいるかもしれませんね。レタリングとは、文字を美しく書くための一種のデザインであり、技術のことです。
たとえば明朝体のように、文字の横や縦の太さの違いを真似して書いてみると、自分でも驚くほどに綺麗な文字が書けてとても楽しいものです。
ほかにも、アルファベット文字Iひとつとっても、上下の部分や縦の棒のようなところに、花や葉、茎などを絡めるデザインを施しても美しいデザイン文字になります。
こうしたアレンジの一つとして、筆記体を取り上げても良いかもしれません。また、お子さんがおじいちゃんやおばあちゃん、友達などにグリーティングカードを送る際、特別な文字の書き方をして筆記体を取り入れると興味をもつ可能性があります。
お子さんが興味を感じるところからスタートすると、「楽しそう!」「ちょっとやってみたい」とポジティブな姿勢につなげられます。いずれにしても「筆記体を書きなさい」といった強制的な働きかけをしないようにしましょう。
子どもの文通相手になってあげよう
ところで、お子さんが手紙を書く際は、当然相手が必要になりますね。
海外に友達がいる場合は、サインやメッセージを筆記体で書くことも可能ですが、なかなか皆がそういうわけにもいきません。この場合は、おうちの方が文通相手になってみましょう。
お子さんは絵や文字などを自由に描きながら、「はい、これあげる」と言って人に渡すのが好きなものです。ママやパパが、お返しとしてお子さんにメモやカードを贈る際、可能であれば英語、さらに筆記体を少しでも良いので取り入れてみましょう。
お子さんによっては「え?なに、この文字、何だか変なの」というかもしれませんが…。興味をもつ子どもたちもいると思います。自分も書きたいとなれば、教えるチャンスになりますね。
がっつり筆記体を教えるとなれば、ママもパパも、そしてお子さんもプレッシャーがかかりますが、自然なやり取りを通じて文字に親しむことは可能です。
ちなみに筆記体をきれいに書くコツは?
筆記体をきれいに書くコツとして、今回は下記の3点を紹介します。
- 文字の高さや線の伸びをそろえる
- 文字の傾きも一定にする
- 字形にこだわりすぎずラクな気持ちで書く
まず、アルファベットの上下の線の高さ、補助線などを思い出しながら一定に保つ書き方をすることで、統一感をもたせられます。筆記体を書く際には、どちらかといえば力を抜いて流れるように筆を運ぶことが重要です。
筆記体を書く際に利用できる教材ノートが市販されています。子ども用であったり大人用であったりさまざまですが、一度書店などで目を通してみると良いかもしれません。
書き写すことでアルファベットを覚えたり、場合によっては有名なフレーズを暗記したりすることが可能になります。お子さんと一緒に親子で筆記体を練習してみてはいかがでしょうか。
まとめ
それでは、この記事で解説してきたことをまとめてみましょう。
以前は必修であった英語の筆記体ですが、最近では社会情勢の変化によって必要とされなくなってしまいました。お子さんには、あえて無理に覚えさせる必要はないでしょう。
もし本気で覚えたい場合は、練習帳などを適宜利用してみることをおすすめします。また、お子さんの興味に合わせて文字を選んだり、自分の名前を書いたりすることから始めてみてもいいですね。
どのような場合でも「マスターすると楽しいかも」といった気持ちで取り組みましょう。完璧に覚えなきゃとプレッシャーをかけることなく、「覚えると何かと便利かも」と思ってレタリングを楽しむ流れで覚えるほうが効率的に覚えられそうです。
今回の記事が親御さんの心配や疑問を解決する手立てとなれば幸いです。