「寝る子は育つ」といった言葉を大切にとらえて、わが子の睡眠時間について配慮しているご家庭も多いかと思います。
寝る間も惜しんで勉強するって偉いの?
勉強が好きで好きでたまらなくて寝る間も惜しんで取り組むお子さん…「わが子がこうなったらいいわ~」と思っても、なかなかそうはいかないのが現状ですよね。
生活のリズムを整え、睡眠時間をしっかり確保することは、身体の成長や心の安定をうながします。また、夜寝ている間に脳の中では「整理整とん」をしているといいますから、睡眠時間を削ることは脳にとってもあまり良くないことなのです。
こちらのママさんは、同じ幼稚園に「とんでもないレベルの教育ママさん」がいるということで、そのやり方に驚きつつも影響を受けて不安を感じているようです。
その不安とは…「こんなにうちはノンビリしているけど、いいのかしら?」といったものです。予測不可能な時代を生き抜くには、自身で考え行動していく強さや能力が必要であることは十分にわかっているのですが…。
実際は「そこまでする必要はあるのか」といった思いが、心のどこかにあるかもしれませんね。
結論からいうと、睡眠時間を削ることはあまり良いことではありません。あまり良いことではない…というより、むしろお子さんの成長に悪い影響を与えてしまいます。
子どもも大人も、日中は思っている以上に脳を使っています。明日も十分に頭を働かせるためには、脳を休ませてあげることも必要です。
ここで、今一度、脳と睡眠の関係を確認してみましょう。
脳は休ませてあげないと壊れてしまう
ぐっすり寝られた場合、心も体も頭も「すっきりした」感覚をもった経験はあるでしょう。
睡眠の質が将来の脳に影響を与えることも指摘されています。質の低い睡眠は、将来的に認知症のリスクを高める一因とされています。質の高い睡眠は脳の健康を保持する役割があるのです。
さらに、睡眠中に脳内の排泄物が効率的に除去され、脳の清掃が行われることが発見されました。これが頭がすっきりする感覚と関連しているかもしれません。
睡眠に関する研究を通じて、睡眠の大切さや奥深さはこれからもさらに明らかになるでしょう。いずれにしても睡眠の質を高めることは、「頭がすっきりする」メリットをもたらすだけでなく、将来的に健康な脳を維持するために重要な要素なのです。
参考サイト記事
脳神経内科フォーラム「睡眠中に脳は洗浄され機能を維持」
WIRED「「脳の老廃物」を除去するには、深い睡眠が必須だった:研究結果」
東京ミッドタウンクリニック「睡眠と脳の機能の意外な関係。」
睡眠時間を確保するには、布団に入る時刻も重要な要素となります。朝起きたお子さんの様子を見て、まだ眠たそうにしている場合は、就寝時刻を少し早めに設定する必要があるでしょう。
次の章では、お子さんが気持ちよく寝られる環境づくりについてお伝えします。
快適に眠れる環境になっている?
子どもたちにとって健康な睡眠は成長と発達に不可欠です。現代のライフサイクルは以前と比べて夜型化が進み、お子さんを取り巻く環境としてはあまり良くない傾向にあります。
加えて、スマートフォンやタブレット、パソコンなどテレビ以外の画面に触れる機会も多く、目を休める時間がないといっても過言ではありません。
この状況は子どもたちに限る話ではなく、大人でも睡眠不足や睡眠の質低下で悩む人が増えています。
以下に、就寝しやすく快適な睡眠環境を整えるためのポイントをまとめました。ぜひご確認ください。
光や音の刺激を減らそう
ただでさえ刺激の多い社会であり環境です。夜寝る前は、光や音による刺激を最小限に抑える必要があります。
光が睡眠に及ぼす影響として検証したところ、朝や日中に光にあたることは生体リズムの調整を促す一方、夜間に光を浴びるのはメラトニン(睡眠と覚醒のリズムを調整するホルモン)の分泌を抑制することがわかりました。
また、騒音環境に関しては、建物外で測定された夜間騒音と主観的な睡眠障害の関連が示された結果となっています。
ただ、これらの報告は実験室で示されたものであり、現実社会でのデータに基づいた研究ではなく、個人レベルでの実測データも必要となりますが、睡眠中の光や音に関する認識に活用できる要素と考えられます。
適温が大切!
温度環境に関しては、就寝前の室温が睡眠に影響を与えることが明らかになりました。就寝前に室温が低すぎるよりは高すぎるほうが睡眠効率が低下するそうですが、就寝中の室温をどの程度にするのが良いかは、さらなる研究が必要とされています。
ただ、寝る前の入浴や就寝前の室温を適温に保つことは、入眠時のストレスを軽減し眠りを誘う要素として研究でも明らかにされています。とくに寝る前に足元の温かさを重視するのは、速やかな入眠につながるそうです。
照明器具を有効活用しよう
お子さんのなかには、真っ暗じゃないと寝られない子もいれば、適度な照明がないと不安で寝られない子もいるでしょう。
睡眠環境を整える場合、大人の感覚ではなく子どもに合わせた照明を調整しましょう。温かみのある光の照明を利用すると、お子さんはリラックスしやすくなり、入眠がスムーズになるといわれます。
また、夜中にトイレに行く場合、まぶしい照明を避けるために、ソフトスタート調光を備えた照明器具の使用も選択肢に入ります。急激な照度の上昇を防ぐことができ、入眠を妨げないでしょう。
寝具やパジャマにも気を配る
子どもたちが「寝ることが楽しみになる」「幸せな気持ちになる」ような環境を整えるうえで、寝具やパジャマも重要な役割を果たします。
お気に入りのパジャマを着て、ふわふわの布団、肌触りの良いタオル生地のぬいぐるみ、ちょっと香りのする枕など、お子さんが「これがあれば安心」できるアイテムを用意しましょう。
季節に合わせてパジャマを替えたり、天気の良い日は布団を干しシーツを取り替えたりするなど快適な睡眠をサポートします。
人間にとって睡眠は健康生活を維持するうえで大切な要素です。ぐっすり寝て、朝起きたときにたくさんの日を浴びれば、良い目覚めとなり一日を気持ちよくスタートできるでしょう。
参考
佐伯圭吾・大林賢史(奈良県立医科大学)「環境要因と睡眠に関する先行疫学研究の整理」
野口公喜(九州芸術工科大学)「快適な睡眠のための照明環境整備に関する研究」
北堂真子(松下電工株式会社)「良質な睡眠のための環境づくりー就寝前のリラくゼーションと光の活用ー」
この記事で解説してきたことを最後にまとめていきます。
まとめ
いくら勤勉とはいえ、寝る間も惜しんで学習に打ち込むのは、あまり良い方法とはいえません。
睡眠中に脳のなかで情報整理が進み、学んだことを記憶に定着させることが可能になります。一夜漬けで暗記しテストに対処できたとしても、それはやはり一時的なことで学力を向上させるのは難しいでしょう。
知識を蓄えスキルを向上させるためにも、そして心身ともに健康であるために、睡眠の質を重視しましょう。お子さんの成長や将来の成功にプラスとなります。親御さんは、子どもたちの睡眠時間をしっかり確保するとともに、その質を向上させるための手立てを講じましょう。
本記事ではそのための方法としていくつか紹介しました。光や音、温度を適切に調整するとともに、就寝前の過ごし方や寝具などの選定を考慮します。そのほか、ご家庭やお子さんの特製などに合わせて工夫し、入眠をスムーズに、そして質を良くするための取り組みをしていきましょう。
本記事がお子さんの学習をより良く進めるための一助となれば幸いです。