男女で脳の構造に違いがあるの?
こんにちは!ミライコイングリッシュ運営事務局です。
ミライコイングリッシュでは、子どもの英語教育に関する情報やアンケート調査結果などについてお伝えしています。
今回は、「男の子と女の子の違いってあるの?」といったテーマについて解説していきます。
英語を覚えていく能力といっても、リスニングが得意であったりスピーキングのほうが自分らしさを発揮できたり…といった特徴があります。最初から文字やアルファベットを書くことに興味をもつ子どももいるでしょう。
こうした特性は、男の子と女の子とでは異なるのか、といった疑問をもつ親御さんもいるかと思います。
会話にあるように、一般的な「男女の違い」に関する情報を鵜呑みにすべきではないでしょう。やはり人それぞれ。男の子のなかにも体を動かすより本を読んでいたほうがいい子もいれば、女の子でも活発で、運動が大好きな子もいます。
英語学習についても、さまざまな方法を試すことで、その子どもの得手不得手が見えてくることでしょう。いずれにしても、先入観を持ちすぎると、子どもが本来もっている能力を見逃してしまう可能性があります。
その点をしっかり念頭においたうえで、今回の本題である「英語学習における男女差はあるのか、あるとすればどのようなものか」について説明していきます。
女の子は言語が得意なの?
さて、イラストにあるように、「言語」の習得に関しては女の子のほうが得意といわれます。読者のみなさんのなかで、そう思える場面にであったことはありますか。
たしかに、子どもだけでなく大人自身をふり返ってみても、日常的に「話すのが好き」と思われる場面がかなり見受けられます。
反面、男性の場合はLINEのテキストも単語のみといったケースも多く、無駄な話はあまりしたくないといった傾向にあるかもしれません。
実際は、どうかといえば、女性のほうが発語数が多いとする研究、男性のほうが多いとするもの、そしてあまり差はないといった研究報告が混在しているようです。
男の子でも、もちろん次から次へと話題を広げる子もいれば、文章を書くのが好き!といった子もいます。ただ、本当におしゃべりが得意な女の子と比較すれば、女性に優位…となるかもしれません。
また、男の子はゲームのようなスピーディーな動きに即対応できる!と感心したこともあるでしょう。空間認知力についても、男性のほうが「ある」とする研究もあり、ただし、国によるジェンダーギャップに影響を受けているといった意見も聞かれます。
このように、一般的に…といわれる内容のなかに「絶対的に女性のほうが〇〇、男性のほうが▢▢」とはいえないものも多いことを知っておくべきでしょう。
人にはそれぞれ、やりやすく覚えやすい方法というものがあり、それに合わせて学んだり覚えたりしたほうが効率的にスキルを習得できると考えることが大切です。
本章 参照元:日本ロボット学会誌Vol.40 No1「脳や思考・行動の男女差」四本裕子(東京大学)
モノゴトの覚え方も男女で違うの?
前述で、男女の違いは気にすべきではないと言われたとしても、やっぱり気になってしまうのが本音かもしれませんね。
実はイラストにあるように、男の子と女の子とでは、物事を覚えるプロセスに違いがあるとも言われています。まずは女の子の特徴からお伝えしましょう。
何か1つの物事をマスターしようとするとき、女の子はまず、漠然とした情報をたくさん集める傾向にあるようです。全体像を把握してから、一定の特徴や傾向があることをつかみ、「あ〜そういうことだったのかあ」と気づく‥‥といった感じで習得をするといわれます。
女性が話すと長くなるのも、こうした点が背景にあるかもしれません。コミュニケーションととったり人とのかかわりを欲したりする傾向が強いといえます(※ただ、お伝えしたように、あくまでも”傾向”といった理解でいたほうがよいでしょう)。
一方、男の子は説明書を1ページめからじっくりと熟読していき、理路整然と物事を順序立てて覚えていこうとする傾向があるとする見方もあるでしょう。ほかに、収集したり、機能性の高い商品に興味をもったりするなど、物に対する欲が高いといった考え方もあります。
男性の脳と女性の脳に違いがあるか調べた研究は多くありますが、際だって女性的な脳部位をもつ個人や、際だって男性的な脳部位をもつ個人はいないとする研究報告があります。脳の性差は多次元であり、モザイク的な様相を示しているといわれているのです。
何度もお伝えしているように、この男女間の差は、そこまではっきりとしたものではありません。
ただ、ざっくりとでも、そうした傾向がある…といったことを知り、わが子に合わせた英語の学習方法を探っていくのも大切なことでしょう。子どものモチベーションアップにもつながり、よりスムーズに英語を習得できると考えられます。
男女それぞれに合った学習法はあるの?
ここまで紹介した男女間の脳の違いをベースに、それぞれに適した英語の学習方法をイメージしてみましょう。
首都大学東京は平成27年に小学校500人を対象に英語習熟度と脳活動の関連を調査しました。光による脳機能イメージング法、光トポグラフィを用いて英語復唱時の脳活動について調べたところ、学習初期には性差は認められなかったものの、学習が進み習熟度が上がるにつれて男女間で脳活動に違いがあることがわかったそうです。
とくに男子は、英語の復唱時に言語に関わる広範な脳領域を活性化させましたが、女子ではほとんど見られず、言語に関わる限局的な脳部位を使用していることが明らかになりました。
同調査報告のなかで「成人を対象として従来の行動研究において、男性と女性は外国語学習時に異なる方略を用いる傾向がある」ともされています。つまり、新しい英単語を学ぶ場合は、女性が実際に声に出して覚えるといった聴覚的な方法を用いるのに対して。男性は暗記したい言葉を空間に配置して覚えるなど、視覚的な方法を利用する傾向があることが報告されています。
また高校生を指導する石川一郎(かえつ有明中・高校元校長)氏は、男子と女子とでは学び方に違いがあると話しています。たとえば男子が数学の難題を解く場合、ヒントを与えれば細かいプロセスは気にせず解答に向かって意欲的に取り組みますが、女子に対しては手順を分解して丁寧に説明したほうが意欲がつながる場合があるとのこと。また、男子は競争を取り入れるのも大好きと話しています。
ただ、ここで注視したいのは、石川氏が伝えるように「数学は男子向きに、国語は女子向きに教える授業スタイル」である点が影響している可能性がある点です。
たとえば英語を教える際に、プロセスを丁寧に分解しながら教えるスタイルがよい場合と、その子どもにとってはヒントを与えるだけで自分で解決する余地を残していたほうが意欲的に取り組む場合があります。
性差を信じる親御さんがいたとしても、異なる場面に出あうかもしれません。女の子であっても挑戦や競争が多くあったほうがやる気につながる場合もあり、あるいは男の子であってもスモールステップの積み重ねで褒めながら進めた方が意欲が向上するケースもあります。
大切なのは、「男の子だから、女の子だから」といった区切りで学習法を判断するのではなく、目の前の子どもがどのような特性をもっており、どのような学び方を求めているかしっかり把握することです。「その子どもに合う方法がもっともベスト」だと考え、柔軟な姿勢で子どもの学習法を採用する姿勢が重要です。
本章 参照元:
・公立大学法人首都大学東京「英語学習における脳活動に男女差」※第二言語の習熟度と処理時の脳活動との間に見られる性別の影響:小学生を対象にした大規模研究(2015)
・スタデイサプリ進路「高校生の今:高校の先生が実証した、男子向き・女子向きの勉強法って!?」より(2014)
性差よりも子どもの個性に合う学習環境を!
2007年、OECDは科学的な根拠があいまいな脳科学理論について注意を喚起しました。そのなかには「脳に性差がある」といった概念も含まれます。
東京大学大学院総合文化研究科教授 四本裕子氏が指摘するように、脳の特徴は個人差が大きく、男性や女性といった単純な基準で区別できません。また、大人になってからも脳は変化することがあり、脳機能や構造は、行動や思考、社会や教育によっても影響を及ぼし合っているとされます。
子育てにおいて、男女の脳に差があるといった主張を参考にするとしても、信じすぎないほうが良いでしょう。性別ではなく、個人の姿を見ること。そうしなければ、本来あるはずの可能性を見逃してしまうリスクがあります。
まとめ
男の子と女の子をもつ親御さんのなかには、「同じように生れて育ったはずなのに、どうしてこうも違うのかしら?」と思うケースもあるでしょう。しかし、それは男子だから、女子だから、といった違いではなく、個人として違いを捉えることが大切です。
英語学習においても「”女の子だから”音楽を取り入れながら楽しく学ぶほうがいいだろう」と考え、歌CDを利用したりディズニ―の映画を一緒に見たりすることもあるでしょう。
挑戦や競争を用いたゲーム式のアイテムのほうが子どもは意欲を示すかもしれません。逆に「男の子は競争が好き」といった神話を信じることになれば、ゲームの勝敗に意気消沈した子どもに温かいサポートができないでしょう。その子は、絵本の読み聞かせを充実させるとどんどん新しい単語を覚えるかもしれません。
子どものやる気を育てるには、個性に合う学習法を取り入れる必要があります。子どもの特性に合わせた学習方法を採用し、英語学習を楽しいものにしていきましょう。