ミライコイングリッシュの記事を読んでくださる方は小学校英語について関心が高いのではないでしょうか。
ただ、次のような疑問をもつ人もいるでしょう。
「そもそも小学校の英語ってどんな感じなのかしら?」
「英語が必修化されて良い結果が見られるの?」
「やっぱり家庭でも英語学習を進めるべき?」
親御さんのなかには「小学校英語だけでは足りないと考える」人もいるかもしれません。
そこで今回は、小学校で英語が教科化された点について詳しく解説します。小学校でおこなわれる英語教育の実態や家庭で意識すべき点などについて説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
小学校英語の教科化はいつから?
はじめに小学校で英語が教科となった時期について紹介します。小学校での英語教育は、2020年度から全国の小学校で全面的に実施されるようになりました。
※ちなみに2018年度から移行措置(英語の全面実施に備えて段階的に導入する措置)が取られ、2019年度の時点で3年生から6年生はすでに英語の授業が始まっていることになります。
小学校における英語の学びは、以前から取り入れられていました。実は、2002年以降、ALT(外国語指導助手)を迎えて授業の中で英語に親しむ機会をつくっていたのです。
このほかにも国際理解に関する活動をしたり、修学旅行等で外国人にインタビューをする場を設けたりするなど、各学校において工夫がされていました。
ある意味、英語が”必修化”されていたといえますが、通知表で3段階評価されることもなく、学校や先生の裁量のもとで学習内容や使用する教材が決められていました。
しかし2020年度からは、正式な教科「外国語科」として通知表で評価されるようになったのです。つまり、英語の必修化+教科化が実現したといえます。
小学校で英語が教科化された理由
小学校で英語が教科化された背景には、昨今のグローバル化があるでしょう。外国との行き来もしやすくなり、海外からも多くの観光客が訪れ、在日外国人の数も増加傾向にあります。
将来は、今よりもさらに外国人とのかかわりが増えると予想されます。このため、小学生が英語を教科として学ぶことで、未来を生き抜くためのコミュニケーション力を育てるべきと考えられているのです。
また、今までのような「外国語活動」の時間で英語に親しむスタイルを通していると、小学六年生が中学へ入ったときに、英語の難しさにギャップを感じるケースも問題視されていました。
小学3・4年生で英語に親しみ、小学5・6年生で教科としてしっかり学ぶことで、こうした中1ギャップを埋める役割を果たすといえるでしょう。
小学校の英語教育の概要
では、現在小学校でおこなわれている英語教育の概要について、質問に答える形でお伝えします。
お子さんが実際に小学校で英語を教わり始めた親御さん、あるいはこれから小学校に上がるお子さんをお持ちの方は、ここで確認してみましょう。
小学何年生からスタート?
英語教育が実施されるのは、小学3年生から6年生までとなります。小学3・4年生は「外国語活動」といった枠組みで、小学5・6年生は「外国語科」といった教科として学びます。
教えるのは誰?
英語を教えるのは、小学3・4年生では基本的に学級担任の先生です。ALTや地域人材と連携して授業をおこなうのが通例となっています。
小学5・6年生では、学級担任もしくは英語専科教員がおこないます。地域や学校によって実情は異なりますが、英語専科教員がALTと地域人材とともに教えるケースもあります。
熱心で責任感のある先生であっても、英語に苦手意識をもつ場合、英語の授業内容が充実させられず、結局は子どもにしわ寄せが生じるケースもあるでしょう。
子どもの英語力を向上させるには、やはり英語を教えられる人材をいかに確保するかが課題であり、各地域や学校で独自の取り組みをおこなうところも増えています。
1年間でどのくらいの授業数?
小学3・4年生では週1コマ(年間35)、小学5・6年生では週2コマ(年間70)が英語を学ぶ時間として設定されています。ちなみに1コマは45分です。
また、小学3・4年生でも「外国語活動」として必修化されたことにより、さらに前倒して小学1・2年生でも年間10コマほどの英語活動をおこなう学校もあります。
小学校での英語教育の目標は?
階英語教育は「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を習得することを目標としており、それらの力をバランスよく伸ばしていくことが重視されています。
英語に限らず言語の習得については、インプット(聞く・読む)とアウトプット(話す・書く)にわけられます。親御さんが子どものころは、インプットの仕方も今とは異なっていたのではないでしょうか。
つまり以前までは「聞く」よりも「読む」力を求められていたのが、現在では「まずは聞くこと」に重点がおかれます。しかしここで「読むのは後回し…」といったとらえ方をするのは危険です。
英語の音を充分聞かせてアルファベットを読むことに興味をもたせたり、興味から書くことへもつなげたり…など、時期や段階に応じてバランスよく力を伸ばす取り組みが大切だとされています。
小学5・6年生の「外国語科」では、3・4年生までの学習内容をもとに「読むこと」や「書くこと」も含めて総合的な力を養います。
このように発達段階に応じて英語の基礎力をしっかり育て、英語を実際に使えるようにするために小学校英語が教科化されたと考えていいでしょう。
小学校の英語学習内容は?
先ほどの目標とも重なりますが、再度確認しましょう。
小学校の英語教育は、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能にわかれています。「話す」については「やり取り」「発表」に分類されており、4技能5領域の学習内容で進められます。
ちなみに「やり取り」とは挨拶やトークなどを指し、「発表」は人前で自分の意見や感想などを話すものです。
小学3・4年生では「聞く」と話す(やり取り・発表)」の2技能3領域を、小学5・6年生では「聞く」は「話す(やり取り・発表)」「読む」「書く」の4技能5領域を学びます。
中学校や高校でも4技能5領域の学習内容であるため、小学校の高学年から高校にかけて一貫した英語教育が実現したといえるでしょう。
小学校で扱う英語教材は?
小学3・4年生では、英語は教科化されていないため、使うテキストや授業内容は学校や先生の裁量となります。
小学5・6年生になると、英語は正式な教科となるため、文部科学省に認可された教科書を使います(どの出版社のどの教科書を使うかは自治体によって異なります)。
ただ以前よりも、3年生から6年生まで、デジタル教材を使って動画をみたりチャンツを覚えたりする機会が増えました。QRコードを読み取れば、自宅でネイティブの発音を何度もくり返して聞くのも可能です。
では、このような小学校で英語授業をおこなう成果が見えているのかどうか、次章で確認しましょう。
小学校の英語必修化は効果がある?
さて、2018年度より先行的に実施され、2020年度から完全実施となった小学校での英語の教科化。実際に成果が上がっているかどうか気になりますね。
文部科学省では、令和3年度(2021年度)までの中学生の英語力に関する調査(「文部科学省 令和3年度「英語教育実施状況調査」)をおこなっています。
それによると英検3級相当以上を取得する生徒数が少しずつ増えているのがわかります。小学校や中学校の先生方からも、英語を学ぶ児童や生徒に変化があるといった声が聞かれるようになりました。
ただ、なかには「英語に興味のある子どもとあまり興味を示さない子どもの差が生まれている」といった指摘もされています。
小学校の英語教育だけでは足りない
英語に対する興味や関心の度合いも子どもによって異なるのは、おそらく家庭の考え方も影響しているでしょう。
ただ、英語に対する興味や関心が高い家庭で育つ子どもであっても、英語の学習量やインプット量を充分に確保するのは意外に難しいといえます。
中学校と高校の6年間で選択科目を含めても1000時間に届かないとされます。つまり「大人になって英語を習得して自由にやりとりする」ためには、義務教育と高等教育だけでは足りないのです。
このことから「小学校で英語を学んだからといって英語が話せるようにならない」といえるでしょう。
このほかに、「小学校で英語が教科化されても子どもの英語力を伸ばせるとは限らない理由」として、下記のような意見も取り上げられます。
- 圧倒的に学習量が足りない
- 宿題があまり出されない
- 専科教員が教えるとは限らない
英語の授業数だけでは足りないインプット量を宿題で補うにしても、実際は難しいのが現状でしょう。通常は国語と算数などの宿題がおもであるため、英語が加わるのはゼロに等しい学校もあります。
また、宿題を出されたとしても「アルファベットの書き方を練習する」「単語を写して書く」といったもの…。「やらないよりやったほうがいい」といった考え方もありますが、英語の目標である「バランスのとれた4技能の習得」の視点からいえばあまり良いとはいえません。
このほかに、シャドーイング(音声を聞いた後、すぐに復唱する練習)や絵本を読んで好きなフレーズや単語を書き出す…など工夫された宿題であれば、英語の力をバランスよく伸ばせるでしょう。
以上のことから、親が本当に子どもの英語力を伸ばしたいと考える場合は、学校以外の場所で英語学習をおこなう必要があります。
最近では、幼児期から子どもを英会話スクールや塾に通わせたり、自宅で教材を使って学ばせたりしている親御さんがいます。
小学校の英語教育に備えるために学ばせる場合もありますが、小学校英語とは関係なく「将来のために早いうちから」と考えている親御さんも多いでしょう。
家庭で英語の学習時間を補おう
子どもの英語力向上のために家庭で親が学習を補う場合、子どものめざす姿をどう描くかが重要になります。
「英語で簡単な読み書きや日常会話ができればいい」といった目的であれば、英語の塾に通わせる必要はないでしょう。小学校から高校までの英語で充分だと思うからです。
ただ、外国人と流ちょうに英語で話したり英語を使った仕事に就いたり…ゆくゆくは海外駐在員となって…のようなレベルをめざすのであれば、学校で習う英語だけでは不十分です。
比較的リスニング力が高いとされる乳幼児期に、英語学習をスタートしてインプット量を確保するだけでなく、家庭において英単語やフレーズを覚えたり実際に使ったりする機会を増やす必要があります。
ただ、家庭で英語を習得させる場合、念頭におきたい注意点があります。次章でチェックしましょう。
家庭で英語を学習させる際の注意点
ここでは、家庭で英語学習を取り入れる場合に陥りがちな親の姿勢を例に挙げ、子どもの意欲がマイナスにならないための策を解説します。
英語学習を強要しない
学校教育でも学級担任や専科教員、ALTが大切にしているのは「英語で聞いたり話したりする活動を好きになってほしい」といった点です。英語が嫌いになってしまうと学習意欲の低下し、学力の定着を図れません。
英語を「覚えさせよう」として「覚えないとダメ!」といった強硬な態度であれば、子どもは一気にやる気を失ってしまうでしょう。
また、親が「英語学習は絶対必要だから」と思って、子どもが嫌がるのを無理に学ばせようとしても逆効果です。英語嫌いになってしまっては、一向に英語力を伸ばしていけないでしょう。
少しずつをくり返す
英語力をキープしたり向上させたりするには、やはり毎日使う機会をつくることが大切です。語学の習得についても、やはり「継続は力なり」なのです。
英語に触れる機会が少なくなると、たとえば「幼児期に英会話ができるようになったのに、やめたとたんにまったく話せなくなった…」「海外駐在のときは、流ちょうに話していたのに帰国後使わなくなったら英語を忘れてしまった」といった状況を生み出します。
幼いころから英会話スクールに通い始めたとしても、あるいは小学校でほかの子どもと同じように英語の授業を受けていたとしても、週1あるいは2の学習時間だけでは、子どもは学びを定着させられません。
毎日少しでも続けることが大切です!「〇〇でゴール」というのは、実はないのかもしれません。
英語が嫌いになってしまっては、上記の状態は無理…ですよね。くり返し学び続ける姿勢を養うためにも、やはり「英語嫌いにさせない」ように工夫しましょう。
母語をおろそかにしない
英語を習得させようとして日本語教育がおろそかになってしまっては、人とのコミュニケーションも論理的思考力も育てられません。
英語漬けになり日本語の習得ができない状況が続くと、どちらの言語も中途半端になってしまう状態「ダブルリミテッド」を招きます。この状態に陥った場合、思考力にもマイナスの影響を与え、充分な学力を身につけられなくなります。
つまり、英語を知っていても、英語で何を話すかの「何」が抜け落ちてしまうのです。話す内容に「意味」がなかったり、人に分かりやすく話したりできなくなる状態は避けなければなりません。
話を豊かにするには、思考力が必要です。思考力を育てるには、母語である日本語の力を育てる必要があるととらえましょう。英語の本だけでなく、日本語の本も読ませる姿勢は忘れずにおきたいものです。
子どもと一緒に言葉に親しもう
家庭で英語を学ばせるとはいえ、子どもにCDやDVDを聞かせて親は家事をしているケースもあるでしょう。ただ、日本語力をつける際に、CDやDVDだけで育てる親はいませんよね。
英語も同じで、教材だけ用意して会話力や思考力が育つものではありません。言語が人の気持ちを理解したり自分の考えを伝えたりするコミュニケーションツールであるとすれば、その力をつけるにもやはり「やり取り」が必要です。
「子どもに英語学習を”させる”」取り組みよりも「親子で一緒に英語を学ぼう!」といった姿勢のほうが、子どもの語学力にもプラスの影響を与えると考えましょう。
親子一緒に学びつつ、コミュニケーションをくり返す過程で、子どもは感覚的に言葉の価値を理解していきます。
ただ、親がつきっきりで子どもの英語学習をサポートするのは結構難しいですよね。サポートはできても「〇〇のときはどうしたらいいのかしら」「子どもがうまくやろうと思ってくれない」などの悩みは生まれるでしょう。
その際に、さりげなく助言をしてくれる存在があったほうが、家庭での学習も続けやすくなります。時間とお金のゆとりがあるようでしたら、英会話スクールやオンライン学習に登録するのもいいでしょう。
あるいは、英語教材を購入することで、相談窓口が無料で利用できるケースもあります。意外に身近なところでサポートの輪が広がっていますので、ご自身でも探してみてくださいね。
まとめ
それでは、おわりに今回のポイントをまとめてみましょう。
- 小学校英語の教科化は2020年度からスタートした
- 小学3・4年生は「外国語活動」、小学5・6年生は「外国語科」の授業を受ける
- 小学5・6年生では、ほかの教科と同様に成績がつく
- 学校では学級担任や専科教員、ALTなどと連携しながら授業が進む
- 英語を習得するには学校の授業だけでは足りない
- 早期に英語を習い始めたり、入学後も家庭学習で補ったりする
- 家庭で学習を進める場合は「英語嫌い」にならないように
- 英語だけでなく日本語の力を育てることが大切
今回は、小学校の英語の教科化に関する内容を詳しくお伝えしました。小学校での授業数は、予想よりも少ないと感じた親御さんもいるでしょう。
小学校英語の概要を知ったうえで、英語教育の目標である「4技能5領域をバランスよく」の視点は親もしっかり知っておきたいところです。「聞く」「話す(やり取りと発表)」「読む」「書く」の4技能5領域は、インプットとアウトプットをバランスよく伸ばすためにあります。
小学校の授業数だけでは英語を習得できないため、本格的に英語を習得させたいと思えばプラスαの学習が必要になるでしょう。
プラスαを考える際、家庭教育で補う視点が大切です。早期に始めるのは、リスニング力の高い幼児期に英語の音やリズム感を早くに習得させられるメリットがあります。しかし、しっかり身につけさせるには、始めたらずっと学び続けなければなりません。
小学校入学後も、子どもがみずから英語学習に取り組めるように、その土台づくりとして幼児期から英語を取り入れてみましょう。その際は、強要することなく、親子で一緒に楽しむ感覚でおこないます。
もしも「小学校の英語教育だけでは不安」「自分でサポートするには少し難しい」と思われる場合は、ぜひミライコイングリッシュをご活用ください。