チャンツという言葉は聞きなれないかもしれませんが、英語学習のとても有効な方法です。この記事では、チャンツとは何か、実際の例を挙げながら、チャンツという言葉になじみがない方にもわかりやすく解説しています。
チャンツとは
チャンツとは、英語の自然な発音やイントネーションを身につけるために、リズムに合わせて単語や文を繰り返す学習方法です。
アメリカの大学で留学生向けの英語教育を担当していたキャロリン・グラハムさんが、1979年に発表したジャズ・チャンツがきっかけとなり、広く知られるようになりました。ジャズのリズムに乗せて英文を発音することで、英語のリズム感を身に付けるというものでした。
歌ではなく、ラップのようなイメージです。英語を英語らしく発音できるように工夫されており、日本でも、小学校や中学校の英語の指導で取り入れられています。
チャンツの実例
チャンツは自分で作ることもできるのですが、例として聞いてみてください。チャンツには、大きく分けて、単語中心のものと、文が中心のものとあります。
単語の羅列が中心のチャンツ
まずは、単語を並べただけのチャンツです。
- ボンボンアカデミー チャンツ給食英語〈えいご〉Lunch in English
こちらは「くだもの」ですが、「チャンツ給食英語」には食べ物以外にもたくさんの動画があります。給食の時間に校内放送で流すことにより、英語に親しませようという趣旨で作られたようで、実際に、給食の時間にかかっていた学校もあるそうです。
英文の応答を身に付けるチャンツ
小学校の英語の教科書の内容に合わせた動画で、教科書会社が作った動画です。
- ENJOY!歌とリズム「Where do you want to go?(チャンツ)」光村書店
この動画をお手本にして学んだあとは、教師やクラスみんなが“Where do you want to go?”と問いかけ、答える児童は、“I want to go to ~”と自分の行きたい国を答えます。何回も繰り返すことで、問いかける言い方と、答え方を身に付けることができます。
日本語では
この動画を / お手本にして / 学んだあとは、/
のように、言葉ごとにはっきりと、等間隔に発音します。
しかし、英語では、
I want to / go to / China.
のように、“I want to ” は一つの塊として発音されています。
日本人の英語がジャパニーズイングリッシュだと言われがちなのは、発音の問題もありますが、
I / want / to / go / to / China.
のように、平坦で等間隔に発音しがちというリズムの問題もあります。
チャンツを用いて練習することで、 英語らしいリズムが身についていきます。
チャンツのメリットとデメリット
英語の指導にチャンツを取り入れると、どのような効果があるのか、解説します。
チャンツのメリット
効果、言い換えればメリットとしては次のようなものがあります。
- 日本語と違い、大事な部分を強く長く発音するという、英語独特の抑揚の付け方が自然に身につく。
- 一語ずつではなく、数語がかたまりで発音される英語のリズムが身につく
- ネイティブの発音やイントネーションに近づく。
- リズムがあると単語や文法を覚えやすい。
- 歌が苦手な子供にも、抵抗感が少ない。
- チャンツは自由に自分で作ることができるので、必要に応じてカスタマイズできる。
例えば、小学校では、低学年の子供たちの多くはダンスや歌に楽しそうに取り組みますが、学年が上がってくると恥ずかしがったり、上手に歌えない踊れないからと、歌ったり踊ったりしたがらない子供が増えてきます。
けれどもチャンツならば、歌やダンスが苦手な子供も取り組みやすく、繰り返すことで覚えられるので効果を上げています。
また、チャンツは歌と違って決まったメロディーや歌詞があるわけではないので、誰でも作ることができます。とはいえ、まずはCDやDVD、YouTubeなどで紹介されているチャンツを使ってみることをおすすめします。
チャンツのデメリット
- チャンツだけでは会話力や読解力などが身につかない。
- チャンツに使われる単語や文法が限られている場合がある。
- チャンツに合わせた発音が自然でない場合がある。
この中で一番心配なのは、「チャンツに合わせた発音が自然でない場合がある。」つまり、不自然な言い回しが身についてしまうということです。お家の方が聞いてみて、言い回しが英語っぽくないなあと感じるようであれば、お子さんに聞かせるのは避けましょう。
お子様向けおすすめチャンツ動画
DVDや書籍も販売されていますが、YouTubeで簡単に見ることができます。単語だけのもの、会話形式のもの、文を羅列するものなどいろいろあります。
mpi松香フォニックス公式
「バナナじゃなくてbanana」は、たいへん有名です。子供のノリもよく、日本語と英語の違いを楽しく覚えられます。入門用におすすめです。果物以外の動画もあります。
- バナナじゃなくてbanana
LiB English 子ども英会話
とても分かりやすい動画です。単語だけのもの、文を学習できるものなど、たくさんの動画があります。
- リズムに合わせて動物の名前を覚えよう!
です。
- 好きな色を英語で言ってみよう
です。
NHK for School エイゴビート2
Eテレの英語番組のコンテンツです。「エイゴビート2すみれ」で検索すると、ほかにもいろいろなチャンツダンスを見ることができます。タレントのすみれさんが先生役です。踊らなくても、チャンツをまねするだけでも大丈夫です。
- これなあに?チャンツダンス
IKKE-チャンツ
基本の英文以外にも色々出てくるので、少し難しいかもしれませんが、真似できるところだけ真似をすればいいと思います。たくさんの動画があるので、お子さんの興味や段階に合わせて選ぶことができます。会話を学ぶ動画もあり、簡単なチャンツでは物足りないお子さんにもおすすめです。
- はたらくくるまチャンツ
チャンツを取り入れるときに、気を付けたいこと
最後に、チャンツをおうち英語に取り入れるときに、大切なことについて解説します。
チャンツだけで英語が身につくわけではないが、とても有効な方法
チャンツだけで会話ができるようになるわけではありません。しかし、チャンツを繰り返すことで、語彙を増やしたり、発音練習が楽しくできたり、リズミカルに英文を発音できるようになったりと、とても有効な方法だと思います。
チャンツを何のために取り入れるのか、メリットだけでなくデメリットも、お家の方が分かっておくのは大事なことです。
チャンツと他の方法を組み合わせよう
まず、覚えさせたい単語のチャンツで、楽しく繰り返しながら単語をすらすら言えるように練習します。
例えば、色のチャンツでいろいろな色を英語で言えるように練習します。
言えるようになったら、色のカードや色紙、いろいろなものを見せて、“What color is this?”と聞いてあげましょう。単語の練習しかしていないのだから、単語で答えられればOKです。
チャンツは楽しく覚えるための方法です。覚えたことは、実際にどんどん使いましょう。チャンツが目標ではなく、英語でコミュニケーションをとることができるようになるのが当面の目標ですから、お家の方とのコミュニケーション活動は大切です。
このように、チャンツだけで終わるのではなく、チャンツで身に付けたことをいかして、学びを進めていくとよいのです。
声に出そう
動画によっては、発声するところだと合図をしてくれたり、お手本の声がなくてリズムだけだったりと、聞く部分と声を出す部分を分かりやすく区別してあるものもあります。見ている人が声を出すパートをわかりやすく指示してくれているのですが、聞く部分でもどんどん声を出していきましょう。
見ている人は、始めはただ聞いていてよいのですが、慣れてきたら動画の先生と一緒に声を出してみましょう。自分一人で声を出すより、先生と一緒に声を出したほうが安心ですよね。
チャンツは、お手本に合わせて発音しながら、発音のリズムを身に付けていきます。小さな声でいいので、声に出すことが大切です。慣れてくると、自信をもって大きな声を出せるようになります。
その子に合ったチャンツを選ぼう
チャンツはとても楽しい活動です。でも、すべての子供が楽しいと感じるとは限りません。また、人気があるチャンツであっても、お子さんのレベルに合っていなかったり、興味に合っていなかったら、効果はあまり期待できません。
乗り物が好きな子には乗り物のチャンツ、虫が好きな子には虫のチャンツなど、その子の興味に合うジャンルから入っていくのがおすすめです。
お子さんにとって、楽しいと感じる活動を与えてあげてください。